コクリ対話

 職場における「コクリ対話」のはじまり

障がい者雇用が上手くいっている職場では、
一人ひとりを理解し、組織の中で、その人に合った働く環境をつくるために、
本人と企業が、協働的、かつ創造的に対話をしながら(コ・クリエイティブ  ダイアローグ:「コクリ対話」)、
その時の最適解を見つけ、さらに試行錯誤を続けています。

「コクリ対話」のはじまり

 障がい別「コクリ対話」のポイント

障がい別情報の非対称性への対応 

コクリ対話は、本人と企業側の両者が試行錯誤しながら見つけていくものなので、
相手を決まった型に当てはめて考えることは適切ではありません。
どの障がい者に対しても「◯◯障がい」という枠組みで捉えるのではなく、
1人1人の個人として向き合い、コクリ対話をしながら相互理解と定着に向けた試行錯誤を続けていきます。
ここでは、相手を理解するためのヒントとして、障がい別「コクリ対話」のポイントを示します。

知的障がい

 

「自分の状況を理解する」、「自分の状況や気持ちを言語化する」ということが困難。
現状に沿った具体的な方法やルール作りが困難。
生活のサポート、家族のサポートと一体で定着が可能となる。
何度も繰り返していくことで情報の非対称性が解消されていく。

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周囲がそれに気づく、本人が気づき、言語化・具体化できるようなサポートが必要

精神障がい

 

自分の状況を客観的に見られる「セルフチェック」と自分を働ける状態にリカバリーさせる「セルフケア」が重要。
自分と社会・仕事とのギャップを補う認知・サポートが重要。
「現在の状況を周囲に伝えられること」と「リカバリーや必要な配慮を周囲が理解すること」で定着が可能となる。
密なコミュニケーションにより情報の非対称性が解消されていく。

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ツール等を用いて、セルフチェックとセルフケアができ、それを伝える密な機会とサポートが必要

発達障がい

 

ナビゲーションブック等で自分の特性・性格を客観的に知り、どのように対処できるか把握できることが重要。
対話を通して、自分と社会・仕事の主観フィルター(メンタルモデル)の違いを認識し、
  互いに折り合い点ややり方を見つけ出すプロセスを大切にし、本人の納得のもとに進めることで定着が可能となる。

仕事の経験に基づいた、本人が納得できる対話を続けることにより情報の非対称性が解消されていく。

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本人が自分の性格や特性を知り、折り合い点を見つけ、納得して対処しようと思えるようなサポートが必要

 主観フィルター (メンタルモデル)

 コクリ対話を深める前提として、「主観フィルター(メンタルモデル)」の説明をしたいと思います。
 「主観フィルター(メンタルモデル)」とは、その人の持つ知識やこれまでの経験をもとにつくられた心の中に持つフィルターのことです。人は必ずこれを通して物事を見たり、聞いたり、考えたり、判断したりします。つまり、このフィルターはその人自身を表すアイデンティティのようなものであると考えられます。
 他者が関わらないとき、「主観フィルター」が問題になることはありません。しかし、他者が関わり合う場合は、同じ出来事・ものごとであったとしても、「主観フィルター」は人によって異なるので、その出来事・ものごとの捉え方は違ってきます。また、「主観フィルター」を通して表れる感情や言動も人それぞれです。捉え方、感情、言動が違いすぎると、お互いの情報の非対称性は大きくなり、「他者の分かりあえなさ」が増えていきます。この状態は不確実で曖昧なため、不安や警戒心が強くなります。
 特に障がいのある人は、この「主観フィルター」がとてもユニークな傾向があるため、「主観フィルター」や捉え方、そこであらわれる感情や言動を理解するのに多くの時間と柔軟さ等が必要になります。本人もそれらを理解していないこともしばしばで、さらに「分かりあえなさ」が複雑化します。

 

 そして、組織(チーム)にも同じような「組織(チーム)主観フィルター」(共有メンタルモデルのひとつの要素となる)があります。組織(チーム)で理解していること・知識、組織文化や組織風土のようなものです。
 特に仕事は、「組織(チーム)主観フィルター」(共有メンタルモデル)を組織(チーム)と従業員がお互いに確認し合い、学び合い、つくっていく(=コクリ対話)ことで、成果があがっていくと考えます。

参考:熊平美香(2021) 『リフレクション(REFLECTION)  自分とチームの成長を加速させる内省の技術』
岡崎裕史・野田直子(2023)「「自分のこと」を知る-他者理解のベースとなる自己理解 - 」 資料