NPO法人 NECST ユースキャリアセンター フラッグ

職員数
(うちサービス管理責任者)
(うち就労支援員)
(うち職業指導員)
(うち事務員)
6人
1人
2人
2人
1人
利用者数合計 16人
精神障がい
(うち発達障がい)
16人
16人
一般就労への移行率 80%

2019年5月現在


 NPO法人NECST ユースキャリアセンター フラッグ(以下、フラッグ)は、平成24年に設立。35歳以下の発達障がい者を対象にした就労移行支援事業所である。
 同法人ではフラッグに先駆け障害者就職サポートセンター ビルド(就労移行支援事業所)にてIndividual Placement and Support(個別職業紹介とサポート:IPS)を基に精神障がい者を対象とした一般企業への就職支援を実践し、高い就職率を示していた。フラッグはその実践をもとに、特に35歳以下という若い発達障がい者に焦点をあてて、障がい特性を踏まえた内容と環境を整え、一般企業への就職を支援する機関として設立された。近年、発達障がいに関する支援機関は多くあるものの、今回は「就職」というハードルで、高い就職率を示すフラッグでのお話を大島施設長から伺うことができた。


個々の特性や強みを活かす


 一般就労を目指すにあたって発達障がいを持っていても、実際の就職活動や職場に入っていくことが現実的であると考えている。実際に体験することが、現実的な自己像へ近づく。利用者の多くは若いため、社会経験が不足していると捉えている。働く自信がない場合こそ、経験をしてもらう。経験がないための自信のなさであったりするからだ。経験から何ができて、何ができないのかを知ることが現実的な自己像に近づいていく。つまり、ご本人の悩みがつぎつぎ表出する人、社会性の課題がある人、睡眠が不安定な人など障がい特性の部分を無理に修正しようとせず、「そういうものがある」として支援していくことが近道となる。個々の障がい特性があることを認め、体験を通して現実的な自己像を見つけ出していく。本人の特性が強みでもあると捉えられる。
たとえば、発達障がいの特性としてコミュニケーションの苦手さがあげられるが、就職する先はドライな人間関係の方が居心地の良い人もいる。無理に人間関係に溶け込めなくてよいと捉えることができる。
就職面接の時には企業に個々の特性を伝えている。また合理的配慮としては指示の仕方は1つ1つお願いすることなどが多い。


本人の気づきとモチベーションを高める


 「個々の特性や強みを活かす」でも示したように、経験によって自己像を現実的にしていく。これは、ご本人の気づきと成長につながる。本人のモチベーションの維持、高める工夫として、その都度ストレングス視点で出来たことをご本人に伝えている。
 また、仕事をするのも、続けるのも自分で決めることが大切である。たとえ辞めたとしてもまた仕事をしていけばいいというスタンスで支援をしている。自分で決める離職も応援している。つまり、離職を失敗ととらえる必要はなく、社会経験を積んでいると捉えているのである。


理念や目標を共有し、チームで仕事をする


 フラッグを利用する場合、月1回説明会があり、フラッグの体験を3日ほど行った後、通所するかどうかを本人に決定してもらっている。就職支援では、会社へ行き障がい特性や個人の支援に関する説明を行うだけでなく、一般社員に向けて障がい理解のためのミニ・レクチャーを行う場合もある。


失敗しながら成長に向けて挑戦する


 「個々の特性や強みを活かす」でも示したが、現実的自己像へ近づくために「経験」をさせている。自信があるように見える場合も「経験」がないため、根拠のない自信となっている場合もある。そのため、経験を通して成長に向けてチャレンジさせている環境があると考えられる。
 採用面接では、すぐに採用とならなくても、面接の経験を積み、本人に合った働き方が、徐々に見つかればよいと考えている。不採用であっても落ち込みすぎず、経験を積み、より自分に合った企業が見つかる方向に意識を向けている。


柔軟であるための「あそび」をもつ


 発達障がい者を一般企業に就職させるためには企業が変わるべきという姿勢ではなく、それぞれの会社の基準で採っていただければよいと考えている。間に立つ支援者の役割として「障がいのある人の考えていることは、こういうことなので可能でしょうか」など提案している。たとえば仕事がしやすくなるために勤務時間等の工夫の提案を柔軟に行っている。社内で障がい者と長くつき合っている人たちは対応のコツが分かっている。表情を見て体調がわかるようにもなってくる。就労継続に向けて勤務時間や対応の仕方などの模索をすると、社内での経験値ができる。社内のサポート力が向上していく。


それぞれが望む職場のかたち


 企業の多くは、障がい者雇用を可能にするために、人のつながりを大切にし、温かい職場づくりを一生懸命されていると思う。ギスギス、トゲトゲした冷たい職場だったら誰でも嫌とは思うが、そこを目標にすると、迷走してしまう気もする。よって、「職場に溶け込めてないです」という悩みを持っている当事者の方もいるが、そういう方には「いいんだよ、そんなに溶け込めなくても。おはようございます、お疲れ様でした、と言って帰ってくればいいんだから、そこは気にしなくていいんだよ。そんなに仲良くしなくていいんだよ」と伝えている。
 人の繋がりがある温かい職場に「信頼」があると考えられる場合もあるが、人の感じ方は多様であり、それぞれが望む職場のかたちは十人十色である。大島施設長の言葉から、多様な職場のあり方には、いろいろな考えを持つ人がいると意識することが大切であると改めて感じさせられた。


「本人のセルフケア力」「現場のサポート力」「外部の支援力」の理想的な割合


 数値では言い表せない。外部の支援がいなくて済むならそれが理想的。本人と企業の間で、きちんとコミュニケーションが取れていて、一緒に頑張ろうというのが理想。しかし、本人のみが努力すべきだという意味ではなく、本人が大切。本人が働きたくないのに働けというのはおかしいと思う。