クオールアシスト 株式会社

従業員数 46人
障がい者数合計 43人
身体障がい
(うち重度)
43人
39人

 クオールアシスト株式会社は、調剤薬局大手クオールホールディングス株式会社の特例子会社である。2009年2月からスタートしたクオールアシスト株式会社は、重度障がい者を対象に在宅で雇用している。障がい者雇用の世界で、このような在宅で重症度が高い障がい者を雇用している取り組みは、とても画期的であり、JMA(一般社団法人日本能率協会)のKAIKA  Awards2017も受賞している。
 クオールアシスト株式会社青木代表取締役社長は、民法を学び、地学を好み、不動産関連の業務経験や自ら中途障がいの経験を持つが、それらの経験を活かし、クオール株式会社(当時)の障がい者雇用の創出に携わり、特例子会社クオールアシスト株式会社の設立に大きく関わった。仕事からほど遠いと考えられる重症度の高い障がい者の在宅雇用を念頭に、多くの障がい者雇用をしている会社を見学訪問し、親会社の調剤薬局という専門性の高い業種と異なる切り口から考え、主に親会社から得られる仕事でメールや声でのやり取りを重視した在宅雇用という発想を想起した。
 特例子会社の認可後も青木代表取締役社長は、重度障がい者である在宅社員に近い目線で関わり、常にスピーディな動きと場数をこなし、体調変化などの緊急時用に電話一本持ち、いつでも対応できる仕組みを整えている。
 ここでは、クオールアシスト株式会社の雇用の取り組みを紹介する。


個々の特性や強みを活かす


 冒頭でも説明したが、主な対象者は就職困難とされる在宅の重症度の高い身体障がい者を雇用している。この「就職困難とされる」特性は、社会に未就業という意味で多く存在するという強みを持ち、彼らに可能な仕事があれば、必要な配慮を行えば雇用の実現を意味する。さらに、職場内理解には弱者救済という理念を持ち、雇用の対象を重度在宅者としている。
 在宅重度障がい者は「在宅で雇用される」=「家で働くこと」の安心感と、働くことで経済的自立できるという安心感を持つことができる。あわせて何かあれば緊急コールができる体制を整えている。
 大きな災害があった時には、メールや簡単な電話で「家族みんなで動けるように」と伝え、携帯の充電容量等もあるため、他はショートメールで対応している。また安否確認システムも導入している。


本人の気づきとモチベーションを高める


 採用時に面接を行うが、内々定後に1回自宅訪問をし、その際、本人とご家族と面接したうえで内定を出している。自己管理ができる人が採用の一番のポイントだ。自己管理は体調管理にもつながるため、つまり、自分の変化に気づけている能力を根本に持つ人を採用している。
 クオールアシスト株式会社では仕事を任せる際に、技術的な個別差の最低ラインを示す。イラストデザインの仕事をできるようにと考えると、イラストレーターを操作するために「地図が作れる」という技術的な最低条件を設定し、そのために必要な指導を受けながらクリアしていくことで、本人のモチベーションを高めている。


理念や目標を共有し、チームで仕事をする


 採用時、自宅訪問を行うが、家族とも面接をする。なぜなら、家族を含めた自宅の環境がとても重要だからである。何かあった時は、家族からでも連絡をしてくださいと協力をお願いし、家族理解が得られてから採用をしている。雇用する在宅障がい者は、家族もチームの一員としてとらえている。
 社内の遠隔OJT制度だが、新人のキャラクターにあった先輩を配する師弟制度を作っている。顔の見えないコミュニケーションに長けた先輩から教わることで、1対1での信頼関係の構築ができ、その後、集団でも対応できるようになる。
 チーム内の信頼関係はリーダー制度で構築している。リーダー1名とサブリーダーを数名選出する。現リーダーと将来のリーダーを育成していくことを考慮し、チーム内の仕事がスムーズに進められるよう配慮できる人材を配して、チーム内で仕事を円滑にしていく工夫をしている。
 クオールアシスト株式会社の主眼は彼らの生活面である。問題があるときは自分から発信してもらったり、必要なら福祉の支援を入れるなど、それをスピーディーに行うため、非常時の行動計画は自分でしてもらう。このような課題をクリアにするため、社員総会時に「福祉避難所の使い方」などの発表を行う場を設けている。この総会は、親会社の役員や社員も来て、発表を聞く機会となっており、障がい者雇用に対する企業内の理解を深めている。


失敗しながら成長に向けて挑戦する


 障がいというハンデがあっても、信頼関係を築きつつ、「ひとりで行動できるように、自分を知る」、「意思を強く持ちなさい」、「真剣に怒られる」など、社会性を考慮したリハビリ的な育成方式をとっている。しかし、「自己解決の協力をする」など、厳しい反面、アシスト本社社員は絶対に見捨てない。「メンバーから色々と言われるのはつらいよね。」と伝え本人の成長に向けて挑戦させる。
 個々のミスは自ら報告してくる。ミスしたことを解決して報告する場合もあるという。彼らにとって、目の前に居ないからこそ、もやもや感がすごく、言わないことが尾を引く。早く楽になった方がいいという思いから、報告がある。その場合、企業側はミスを怒るよりもどうしたらいいかの資料を提示する。なぜミスをしたのかの検証を指示する。同様に、遠隔OJT制度でも、師匠自身の基幹業務のやり方が本当に正しいのか、人に教えたときに自分がマニュアルから外れているのに気づくということもあり、失敗しながら成長に向けて邁進する場が確保されている。


柔軟であるための「あそび」をもつ


 必要に応じて、一人程度グループ異動する「工夫」をしている。これは人を動かすことで、個人とグループ間の活性化を図る。「理念や目標を共有し、チームで仕事をする」でも紹介したように、人が変わり、迎えた新たな人に仕事を教えるときに自分の仕事の重要さや良さを認識する。そのために、リーダー、サブリーダー、プロジェクトメンバー間でミーティングをし、グループ全体のミーティングを開催する。それらミーティングは彼らに任せている。常に知ったもの同士ではなく、ちょっとした「工夫」の変化からグループの柔軟性とそれぞれ個々の力の活性化を狙っている。
 定着のための物理的支援では、「違和感」に着目している。身体が「傾く」のはなぜか。理学療法士や作業療法士にアドバイスを受け、プロの視点からのアプローチにより、仕事に向かえる時間が長くなる。制度的支援では、8:00-22:00までのフルフレックスでその日の勤務時間を通院等を考慮し、自分で設定している。仕事の始まりと終わりのメールを送り、終了時は報告書を添付するスタイル。フルフレックスにすることで、通院やリハ時間の確保と、長期入院時の経済的負荷に配慮をしている。


「顔の見えないコミュニケーション」


 テレワークなので普段から相手の顔が見えない。そういう意味では弱点もあるが、遠隔OJT制度などの活用で、新人に合った先輩が教えることになっている。先輩から伝えてもらうことで、1対1でコミュニケーションを学ぶことができる。そこから集団(チーム)へのコミュニケーションに入っていくと自然と上手く行く。
 ミスしたときは、自分で解決して報告してくる時もある。彼らにとって、目の前にいないからこそのもやもや感が大きく、言わない事が尾を引くぐらいなら、早く楽になった方がいい。ミスをしたときは、怒るよりもまず、どういう風にやった方がいいかの資料出した方が良い。それで上手くやってくれれば、なぜミスしたかの検証をして終わる。


「本人のセルフケア力」「現場のサポート力」「外部の支援力」の理想的な割合


「本人のセルフケア力:6」「現場のサポート力:2」「外部の支援力(家族も含む):2」

 「本人が仕事をする」と言うから会社はその支援をするだけ。家族とのつきあいは彼らとのつきあいと同じくらい大事にしている。家族は本人の一番のサポーターである。