公株式会社 スミセイハーモニー

従業員数 285人
障がい者数合計 235人

身体障がい
(肢体不自由)
(内部障がい)
(聴覚障がい)

(視覚障がい)


60人
9人

66人

1人

知的障がい 20人
精神・発達障がい 79人

 スミセイハーモニーは、住友生命グループの特例子会社であり従業員数285名のうち235名が障がい者である。業務内容は生命保険に関わる事務全般であり、主な業務は生命保険に関する各種手続き書類の受付・スキャニング・保管、官公庁からの生命保険契約内容照会に関する回答書類作成等である。当社の特徴は「様々な障がいをそれぞれでカバーしあって業務を行う風土」「ダイバーシティ推進室の設置」「障がい者の管理職への登用」「職員自身による会社を良くするための運営」である。設立当初は身体障がい者がほとんどであったが、今は障がい種別によって部署を分けず、様々な障がい者がそれぞれの課やグループで一緒に働いている。多様な人々が一緒に働くためには課題もあるが、気軽に相談できる場の提供や個々のキャリア形成、モチベーション向上等に取り組み、日々、D&Iに向かって進んでいる。多くの取り組みがあるが、今回は、特に対話に関連した「ダイバーシティ推進」の視点から紹介したい。


会社として「あらゆる多様な人々と働き続ける」ために


 スミセイハーモニーでは、本人の障がい特性に対する自己理解、自己受容、自己発信ができることを重視している。しかし、入社後、新たに発出した障がい特性によって、周囲の社員との摩擦や業務遂行に課題が生じる場合もある。例えば、身体障がいで入社した人が、後から発達障がいの特性で業務遂行が上手くいかないといった兆候が顕著に表れるといった例だ。精神・発達障がいのある社員の中には、コミュニケーションの取り方が難しく、困った時に相談できずに苦しむ人が多いと話すのは、常務取締役、人事総務部長、ダイバーシティ推進部長を兼務している丹羽氏。
 この状況に組織として対応すべく、「ダイバーシティ推進室」を設置している。ここは、障がいのある社員が安定して長く働き続けられるように、社員の不調の兆候を素早く把握したり、日常的な相談窓口として、また、入社3年未満職員の定期面談を行っている。相談内容は「職場環境」「上司・同僚・部下」「自己の障がい・体調」「その他」など多岐にわたる。推進室では、精神保健福祉士や社会福祉士、キャリアコンサルタントなど、障がい者雇用・定着支援経験のある専門支援員12名や住友生命定年後に再雇用された業務アドバイザー兼支援員17名が定着支援と業務指導を行う。精神的なサポートのみならず、業務内容や業務スキル、自身のキャリア形成等といった側面からもサポートが受けられるという仕組みだ。2021年度の相談(面談)件数は2,498件(月平均208件)と社員の相談ニーズに多数対応している。また、障がい特性やコミュニケーション等の学びの場として、障がい者社員が自ら社内で勉強会を開き、周囲への理解を高める取り組みも行っている。このような取り組みを続け、直近10年間(2011〜2020年)の入社数136名に対して退職者は12名で、2年以上勤続の定着率は94.6%である。


本人ができる努力を応援する


 対応しているのは会社だけではない。「障がい者自身ができる努力を応援する」環境がある。他の社員との関係や業務においてトラブルが起こり、本人にも原因があった場合は、まず粘り強く話を聴き、本人が受け入れられる部分から少しずつ変えられるように、本人の自己理解、自己受容をサポートする。具体的には、ナビゲーションブックの作成等を通して、課題の整理、会社でできる支援と自分でできる努力(社会人としての成長)の整理を行う。これらの整理を外部支援機関と連携しながら行うこともある。

 障がい特性に起因することもさることながら、社会人経験が少ないがゆえの組織内でのルールやマナーへの理解が難しい場合、その時に応じて本人の話を聴きながらも、会社に勤める社会人としてどのように行動してもらいたいかを伝え、本人に納得してもらえるよう何度も対話を重ねる。「これにはすごく苦労しているのが現状。ウルトラCとかの回答があるわけではなくて、粘り強く聴いて、相手が気づきを得て分かってもらえるかどうか」と丹羽氏は話してくれた。


何の話であれ、一旦、聴く


 粘り強く聴くことを日々実践しているグループ長がいた。「部下の一人がね、子どもが産まれて。最近、暗いニュースが多い中で、なんかすごい嬉しくて」そう話す岩橋氏は、ここで働いて21年、上席グループ長の役職でグループをまとめている。グループの主な業務は生命保険の書類をデータ化することだ。岩橋氏は生まれつき上肢障がいがあり、腕が使えないので左足や口を使用しながら業務を行う。リーダーとして意識していることについて聞くと、何の話であったとしても「一旦、聴く」ことのようだ。さまざまな事情で会社を休むことが増えて悩んでいたり、仕事の進め方について聞かれたりした場合、すぐにアドバイスをしたくなるが、まずは聴く。途中で口を挟むと、話が途切れてしまうという理由からだ。相手のペースを保って話を聴く。
 まずは相手の話を聞くことに徹しているが、仕事上、相手に言うべきときもある。その場合は聴いた後で相手にしっかり伝える。「さっき言ってたこの話やけど、こういうふうに(自分は意味を)取ったんやけど、それで間違いない?」と確認してから、自分の伝えたいことを話す。相手の話に自分が入っていくスタイルを心がけているのだ。そして、「それやったら、こうした方が良くない?」とこちらから言うべき内容を伝える。すぐには伝わらないことも多々あるが、そこは時間をかけてユーモアを交えながら丁寧に相手と向き合う。そうすれば、長い時間をかけて、時に返ってくることもある。「話をして、理解してもらえたなって、感じる瞬間だったりとか(がある)。別に僕の考え方が正しいとか、そういう話ではないんですけど、人の考え方が変わったり、成長したのかなと見えたりした時は頑張ってよかったなと思います」。それが、岩橋氏自身の働きがいにもなっている。


何でもオープンに話せる関係


 これまで21年間働いてきた中には、当然、紆余曲折もあった。岩橋氏に長く働くコツを聞いた。「やっぱり、その周りに人がいてるって大事なのかなって。結構何でもオープンに喋れる関係は人が近くにいてるっていうのは今まで続けてこれた理由なのかなと思います」岩橋氏自身も上司や同僚から何度も話を聞いてもらった経験がある。

 最後にこれからやりたいことを聞いた。「会社がもっと大きくなって人もどんどん増えてくると思うんですけど、1人でも多くの人が快適に仕事を頑張れるようになったらいいなと。やっぱり周りあっての自分なんで。周りの人が困っていたら話ぐらいは聞けるかな」岩橋氏が上司や同僚からしてもらったことを、自分なりに実践し、これからに繋げていこうという意欲が伝わってきた。


スミセイハーモニーの合理的配慮の考え方


 本人の合理的配慮については、入社時や半期のグループ長による面談、専門支援員の面談時等で定期的に確認している。スミセイハーモニーにおける合理的配慮の考え方は、「障がいに起因する特性に基づく配慮希望であること。会社に求めるものであって、他の職員(社員)に求めるものはお互い様の配慮。要望が他の職員や業務に悪影響を及ぼさないこと。他の職員との公平性に問題ないこと」これらを全社員で徹底している。
 だが、時に合理的配慮の提供ができないこともある。例えば、他の場所には、パーテーションスペースも作っており、必要があれば、そこで業務を行っても良いとしているが、皆で作業するスペースの机の1つである、自分の机にパーテーションを置いてほしいという要望があった。しかし、ここではグループで業務を行い、グループ長が個々の顔色を見たり、業務全体を把握して、個別に作業をしてもらったりしながら、業務が進められるという業務上のやり方がある。本人が、パーテーションがある他の場所に行きたくない場合、本人が自分の机にパーテーションを置いてほしいという要望に対応することは難しい。その場合は、会社側として合理的配慮の考え方を示し、障がい者からの合理的配慮への要望に応えられない場合は、本人が納得するまで何度も丁寧に説明をしている。