株式会社  リクルートオフィスサポート

従業員数 515人
障がい者数合計 432人

身体障がい
(肢体不自由)
(内部障がい)
 →うち免疫機能障がい
(聴覚障がい)

(視覚障がい)

(その他)


170人
114人

48人

18人

10人

5人

知的障がい 11人
精神・発達障がい 104人

※2022年6月現在


 リクルートオフィスサポートはリクルートグループの特例子会社だ。リクルートグループ各社の事務代行業(社員の経理伝票の確認、総務・人事・法務業務の一部代行、コピー・発送代行、定期健康診断データの発送・管理、入館証の発行・管理、名刺作成)とリクルートグループ運営媒体の情報審査(口コミ 投稿後・掲載前審査、求人情報 掲載後確認)を行っている。興味深かったのが、同社の企業理念は社員が考えてつくられたものであること。「私たちはあらゆる人が能力・意欲の発揮できる機会を創造し、成果を高めることにより豊かで人に優しい社会の実現をめざします」というもので、社員にも「ケア(care)とフェア(fair)」を大切にするという形で浸透しているようだ。障がいによる多様な違いを認め合い適切に配慮し合う「ケア」と、自己ベストを目指す一人ひとりの努力と成長を公正に評価する「フェア」を同時に目指している。自己ベストの更新については、制度面でもアスリート支援制度やキャリア相談室の設置、資格取得インセンティブ支給といったサポートがある。同社の能力開発やキャリア開発を中心に、代表取締役社長 渡邊氏、経営企画部部長 榎本氏、経営企画部広報グループマネジャー 湊氏にお話をうかがった。


人材への投資、そして長く働いてもらうために


 理念にもあるように、同社は個々の能力開発に力を入れている。新卒入社者は4ヶ月間、中途入社者は3ヶ月間、座学と各部署での業務体験という充実した研修があり、その後、本人の適性を見ながら正式に配属を決めている。配属後もポジションごとに必要な最新の研修が用意されている。例えば、チームを率いるリーダーは、未来をどう創造していくかのポジティブアプローチを学ぶことができる。私たちはどうありたいか、今いるスタート地点からありたい状態までどのように取り組むのか。課題に着目しそれを解決するのではなく、どう未来に進んでいくのかという思考に変えるための研修だ。この視点は社員の能力開発にも活かせる。強みに目を向け、個々人の伸びしろも見ながらポジティブにアプローチできる。

 では、なぜ能力開発に力を入れているのか?それは、社員の「安心して長く働きたい」という想いに応えるためである。これまでは障がい者ができる仕事をやってもらうことで業務は事足りていた。時代が変わり、リクルートグループの業務自体が進化・変化している中で、徐々に今までのような仕事が提供できなくなってきた。能力やスキルを高めていかなければ、できる範囲が限定的になってしまう。「もっともっと力は伸びる」そう考えて、社員の能力やスキルをあらゆる角度から引き出せるようにしている。これは挑戦の連続だ。たとえ社員の能力やスキルを引き出したとしても、職域開発をしなければ長く働き続ける環境を用意できない。双方を同時にやりながら、これからの時代に備える。

 渡邊氏は次のように話してくれた。「リクルートオフィスサポートはプロダクトの開発をしない。だから人材に投資する。投資するとは従業員数を増やしていくこと。採用しても、何らかの理由でやめてしまったら意味がない。社員ともっと話をして、もっと力を発揮してもらって、この会社にいたいと思ってもらえる環境をどうつくっていくかを考えている」。


未来に向けた対話


 同社はミッションシートを使用し、社員と上司が相談しながら半年間の目標(ミッション)を立てる。本人と上司の双方向のコミュニケーション、つまり「対話」を重ねながら、共に設定していく。本人が「今の仕事でやりたいこと(Will)」を決めて、上司と話し合う。Willを実現するために、どのようなテーマにおいて、自分のどのような強みを活かしたいか?克服したい課題は何か?具体的な行動計画はどのようなものか?実際の日々の行動に落とし込めるまで深く話し合う。
 3ヶ月後に中間面談があり、業務の進捗状況や取り組み姿勢などを確認しながら必要に応じて調整していく。最後に振り返り面談があり、双方で確認する。そして、その達成具合が評価に結びつく。
 面談では、お互いが思っていることを言いながら、本人の認識と上司のフィードバックが異なることがないように、丁寧にすり合わせをする。そのために評価の指標を明確にし、ミッションが定量化できるのであれば定量化する。曖昧な表現はすれ違いや食い違いの原因になりやすいので避ける。
 社員もどんどん意見を言うので、上司はそれを聴きながら、とことん時間をかけて納得がいくまで話をする。ミッション面談以外にも、毎週のように行われる上司との1on1やチームでのミーティングなどで、お互いの認識のズレを修正する機会を多く持つようにしている。個々のキャリア開発は、時間をかけた本人と上司の丁寧な対話の積み重ねを経てなされる。
 同社では障がいの有無にかかわらず公平に評価される。実際、約40名の管理職やマネージャーのうち約半数に障がいがあり、部長職には2名の障がい者が就いている。


いち早く取り組んできた在宅雇用


 同社が在宅雇用をスタートしたのは2016年10月。北海道旭川市のUIJターンテレワーク実証実験に参加したことがきっかけだ。今では、長野県や福岡県も含めて129名が各地域で活躍している。精神障がいや発達障がいの方が多く、在宅勤務は彼らにとって働くスタイルや環境が整いやすいことが分かってきた。雇用形態は契約社員、9:30〜16:30の6時間勤務である。朝と夕方のみオンラインのカメラでつながり、他はチャットでやり取りをしている。主な業務はリクルートのウェブ媒体の審査業務である。


テレワークの課題への挑戦


 テレワークの課題として多く挙げられるのは体調管理。同社では、朝会で顔色を確認するほか、五段階の体調自己申告を用いて判断する。リスクがありそうな場合は、本社勤務の進行管理担当者やリーダーが連絡をし、仕事量を調整したり早退を促したりするなど、臨機応変な対応をしている。夕方には、提出された業務日報を進行担当やリーダーがチェックする。気になる記述があった場合は、翌日本人に話を聞き、早い段階でリスクを回避できるよう努めている。
 また、「帰属意識」や「孤立感」にも配慮している。全社員が出席する年に1回の社員総会にもオンラインでの参加を求める。また、各事業部では半年に1回、キックオフというイベントを行っている。キックオフでは、リクルートの従業員にも参加してもらい、同社の社員の仕事がリクルートの事業にどんな貢献をしているのか、社会に対してどのような影響を与えているかについて話をしてもらう。それぞれの地域で在宅勤務をしている従業員同士がつながり、リクルートグループの従業員として働く自覚やモチベーションを高める機会となっている。他にも、コミュニケーションのきっかけ作りとして、ランチ会やハロウィン仮装大会などのイベントを実施している。小さなつながりの機会を定期的に作っており、在宅勤務社員からも一体感を感じられると評価されているようだ。
 渡邊氏はリクルートオフィスサポートでできることは何かを常に考えている。力を発揮できる環境を作っていきたいし、仲間を増やしていきたい。その1つの形が2023年4月からスタートする。それは限定ではあるが、完全在宅の正社員雇用である。全国的に見ても珍しい「働き方の選択肢を増やす」取り組みだ。新たな挑戦が始まった。