「障がい特性に応じた仕事内容」も配慮すべきですが、それ以上に「障がい者の特性や性格に合った柔軟な組織であるかどうか」が重要な要素であることが分かりました(NPO法人ディーセントワーク・ラボ2018)。そこから導き出された働きやすい組織・職場の要素を「障がい者がディーセント・ワークを達成するために 〜5つのエッセンス〜」として紹介します。
出典:NPO法人ディーセントワーク・ラボ(2018)『障がい者の特性に着目した仕事と組織をつくる』
❶ 個々の特性や強みを活かす
「こういう人にはこの仕事を」という固定概念から解放する。
個々の特性や強みを理解しようと努め、それらを活かせる組織。
「(特性や強みを活かして)自分は仕事ができる」と感じられるようにしなければ、「仕事はつらいもの」、「できない仕事・苦手な仕事」になりかねません。 |
はじめは「できないものをできるように」ではなく、 「できるものをもっと(より早く、正確に、一人で)できる」ように考えることが基本です。 |
このような組織では、その人の可能性やのりしろも含めて信じ、「個々の特性や強みを活かし、最大限まで引き出すにはどのようにすればよいか」を常に考えながら、行動しています。
障がいに起因すると思われがちな要素を、個々の特性や強みとして捉えなおすのもその一つといえます。
またその人に応じた適材適所に配置することも、特性や強みを活かす上では欠かせません。
❷ 本人の気づきとモチベーションを高める
成功体験を積み重ね、よいサイクルをつくる。
本人に「自分は仕事ができる」「こうした方がもっと良くなる」と気づきを与えることができ、本人の「やりたい」を応援できる組織。
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仕事へのモチベーションが高まり、「もっとできるようになりたい」と個々のさらなる成長意欲を引き出します。
また心から認めてもらえたと感じた人は、自己を客観的に振り返ることができ、「どうすればもっと良くなるか」「自分が改善すべきところ」の気づきも得やすくなります。
ただし、障がいの状況によっては、自信を実感したり、モチベーションを高めたりする経験が不十分の場合もあります。マネージャーは、本人にとって良い気づきがあるように話の仕方を工夫したり、段取りをしたり、次につながるポジティブなフィードバックをしたりすることが大切です。 |
❸ 理念や目標を共有し、チームで仕事をする
チームで凸凹を補い合いながら、目標を達成する。
法人の理念や、(法人・チーム・個人の)目標を共有し、
チームで仕事を成し遂げることに価値をおき、チームが機能するためのトレーニングを行っている組織。
障がいがあることを理由に、組織の理念や目標を共有することから遠ざけられてきた人も少なくありません。中にはチームで仕事をすることが困難な者もいます。障がいがあるために、さらに困難さが増すこともあるでしょう。 |
「チームで仕事をする」とは、
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❹ 失敗しながら成長に向けて挑戦する
失敗しながら挑戦。「やってみる」姿勢をつくる。
法人の理念や、(法人・チーム・個人の)目標に向かって、「失敗しながら成長する」というプロセスを重視した、挑戦する組織。
失敗しないように仕事をするのではなく、「良い仕事をどのようにするのか」を考えることを大切にします。理念や目標に向かって挑戦を応援し合い、多くの失敗と小さな成功を積み重ねて、それを自分や組織の自信にできるようなフィードバックもします。そもそも障がいがあると、十分な体験・経験をしておらず、「チャレンジをして失敗する」機会さえ与えられてこなかった可能性もあります。 |
人にはDignity of Risk という「リスクを負う尊厳」「失敗をする権利」があります。「失敗は成功の素」と考え、決して諦めない。そこでは、障がい者に仕事をしてもらう覚悟と取り組む姿勢が問われます。いかに将来を見据え、リスクを取れるか。そうすることで障がい者の多種多様な仕事の可能性が見えてきます。 |
❺ 柔軟であるための「あそび」をもつ
「関係ない」こともやってみる。それを「意味づけ」できる組織。
「あそび」をもつ組織。
「あそび」は個人や組織のひずみを受け止め、バランスを保つところでもあります。個々の強みや能力が最大限に発揮され、個人の可能性の幅を拡げるためには挑戦しながら試行錯誤をくり返し、失敗や不測の事態にも臨機応変に対応できる柔軟さが必要です。かつ、そこでの学びを次に活かせるようなポジティブなフィードバックも欠かせません。強い組織に決まった形はなく、その時その時の状況によって、個々が考えて判断し、姿・形を柔軟に変えていくことができます。障がいのある人が働く上で生じるかもしれない課題への適切な対応は、実は職場の「あそび」によって実現できるかもしれません。
信頼は生き物。一朝一夕で形成されるものではなく、様々な出来事や感情の動きなどを経ながらつくられていくもので、終わりや完成がありません。「生き物をお互いに育て合う」という状態に例えることができると思います。
信頼には、まず「自分を自分で理解する」、「自分をハンドリングできる(扱える、対処できる、決められる)」といった「自己への信頼」があります。
「相手から理解される」、「相手を理解する」というプロセスを続けることで、「他者への信頼」が形成されます。
自己だけでなく、相手も上の図と同じような状態になったときに「相互信頼」がつくられます。
相互信頼は、お互いに理解しようと密にコミュニケーション(言語的、非言語的)をすることで形成されるのです。
「他者への信頼」においては、本人自身が「相手に理解された」と感じていることも重要になります。
何らかの理由で、相手に理解されてないと感じる経験が続くと、どうせ自分は理解されないと諦めの感情を持ってしまうことも少なくありません。相手は、「あなたを理解したいと思っている」「教えてほしい」というメッセージを伝え、その姿勢を示しつづけることで、本人が「私のことを理解してくれた」と感じられるようになることもあります。そういったプロセスを通して、「自己への信頼」も強化される場合があります。
障がい者が働く上で相互信頼を築いていくためのポイントは6つ。全てのベースとなる「対話」、「セルフケア」、「ストレングス」、「エンパワメント」、「期待とリスク」、「チームによる仕事遂行」です。ポイントの一部はp13から詳しく説明していきますが、ここではそれぞれについて簡単に説明したいと思います。
【対話】
【セルフケア】
【ストレングス】
個々や組織・チームにおいて、
【エンパワメント】
【期待とリスク】
【チームによる仕事遂行】共有メンタルモデルナチュラルサポート
令和4 年度
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