株式会社 ダイキンサンライズ摂津

従業員数 173人
障がい者数合計 153人
身体障がい
(肢体不自由)
(聴覚障がい)
(視覚障がい)

38人
29人
1人
知的障がい 32人
精神障がい   
53人

2019年3月1日現在


 ここは、第三セクター方式・ダイキン工業株式会社の特例子会社であり、障がい者が153名働く非常に規模の大きい特例子会社である。現在は210人の雇用に向け、年間約15名の雇用を目指している。業務内容は、親会社の全事業部から受注しており、機械部品の加工・組立、包装・袋入れ・完成仕上げ、廃却エアコンのフロンガス回収・解体分別、住宅用空気清浄機修理、化学品製造と多岐に渡っている。
 代表取締役社長である澁谷氏は、「特例子会社は大企業の仕組みの中で動いているから、小さな障がい者雇用企業のように家族のような信頼で成り立つ、人生の全てを引き受けるといった仕組みとは違うところがある。そういうのはすごいと思いながらも、大きい仕組みの中でも、働きやすい環境をいかにつくるか、本人の力をいかに出せるか、それを定年まで続けてもらうかを常に考えて行動している。そして、これは障がい者のみならず全ての人に当てはまる」と話す。


「多くの障がい者が長く働ける仕組み」


 同社の障がい者の入社1年後の職場定着率は、障がい種によって85〜91%である。特に精神障がい者の1年後の定着率は85%であり、全国調査の49.3%(※)を大幅に上回っている。その理由はどうしてだろうか。
 規模が大きく、働く障がい者の障がい種も多いが、障がい者個人やグループ(チーム)の情報をしっかり取得し、その情報が挙げられるよう、また、集めた情報の交換を非常に密に行えるような仕組みを組織的に整えていることに理由がある。多くの障がい者・障がい種の人々が長く働き続けられる仕組み、かつ、仕事に携わることができる仕組みの経験と知見がこの職場にはたくさんあった。

※出展:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2017)『障害者の就業状況に関する調査研究』


個々の特性や強みを活かす


 事前に実習してもらうケースもあるが、入社したら、まずは総務課に仮配属という形で配置し、3〜4つほど職場を体験してもらい、その中で適性を見ていく。事前にある程度どこで働いてもらうか想定はしているが、本人がどこならやっていけるか、それぞれのグループの状況も考えながら決めている。実際に配置してみて上手くいかない場合も出てくるので、その場合は異動してもらうことになる。


本人の気づきとモチベーションを高める


 精神障がい者が長く働き続けるためには、仕事にやる気が持てるようにしなければならないと語るのは、製造部長の松本氏である。調子が悪いときもありそれは仕方ないが、ある程度はそれをいかに乗り越えていくかが大切。それをメンバーとしっかり相談するなど、コミュニケーションを密に取りながら、本人が乗り越えていけるようにサポートしていた。これにより仕事のモチベーションが維持され、職場定着へと繋がっているのである。


理念や目標を共有し、チームで仕事をする


 この職場の最大の特徴は、「グループ(チーム)ごとに仕事をする」という仕組みが徹底されているところにある(図を参照)。チームで仕事をする際に重要な概念である「共有メンタルモデル」がリーダーを通してラインメンバーに共有される仕組み、問題やミスがありそうなとき、あったときの解決方法の仕組みがあり、その時の状況によって関わるべき人物(リーダーか職場長か課長かなど)も決められている。
 得るべき情報(本人の様子、仕事の様子と結果、他者との関わりなど)、それを取るための方法(日誌、朝礼、記録など)、その情報が誰に対して、どのように共有されるか、どの程度の問題・課題であれば、どの職位の人に共有するか、誰がサポートに入るかといったことが、ある程度決まっており、その仕組みが体系立っている。解決の筋道が明確であり、対処が早いため、事が大きくなる前に解消されることも多い。会社全体では、月に1回行われる会議で共有され、職場定着の問題も含めて話し合い、情報共有がなされている。
 グループ内では、何かあればリーダーに聞き、リーダーが指示した内容で進めるようにしている。司令塔が何人もいると、誰の言うことを聞いたらいいのか分からず、いろいろな人からいろいろな指示があると混乱し、精神障がいの方は気持ちが滅入ってしまう。必ずリーダーを通すように指導しているとのこと。


柔軟であるための「あそび」をもつ


 グループや職場間において、仕事量に合わせて行き来がある。前日までに課長、職場長、部長が職場間で人のやりくりをして、朝礼の時に本人に手伝いに行くことを伝えている。人の交流は頻繁にあり、精神障がいの方の急な欠勤にも臨機応変に対応していた。
 また、職場長である鈴木氏は、グループのメンバーがリーダーとの間に壁をつくらないように、言葉遣いに気をつける、目線を合わせる、言うだけでなく一緒に体を動かす、リーダーが困っているときはわざと周囲に聞こえるように自分から伝えるなど、様々な配慮をしていた。リーダーをマネジメントする立場から、相互にコミュニケーションの取りやすい雰囲気をつくり、組織としての余裕をつくろうと努めていた。


信頼


 社長、製造部長、職場長の全員が口をそろえて、「人間はミスがあるものだ。失敗をしたときは本人を責めない。仕事をする仕組みで不具合がなかったかを徹底的に検討し、変更すべき点があればすぐに改善していく」と話していたのが印象的であった。失敗を本人のせいにはせず、仕組み(取り巻く環境)の不具合として考える。そして、それが職場の人間関係が原因であればその調整を、プライベートなことが原因であれば、支援機関を通して家族も含めて解決してもらう。対応はすぐに行う。そうでなければ、ずっと尾を引き、問題が大きくなってしまうからだ。


「本人のセルフケア力」「現場のサポート力」「外部の支援力」の理想的な割合


澁谷氏:「本人のセルフケア力:5」「現場のサポート力:3」「外部の支援力:2」
一番は本人のやる気がないと始まらない。それがあって、会社がサポートして、生活の部分で外部の支援の力を借りるという考えである。

松本氏:「本人のセルフケア力:4」「現場のサポート力:4」「外部の支援力:2」
まずは本人が働く意識があるか。会社は働きやすい職場になっているかどうか。会社は関わっている時間が支援機関よりも多いので、本人と会社の割合が多い。本人の気持ちと会社の環境がマッチしてはじめて続くと思う。

鈴木氏:「本人のセルフケア力:4」「現場のサポート力:4」「外部の支援力:2」
本人の気持ちは大きい。あとは、働く環境が大切で、(仕事をサポートする)道具を作ったり、決められた手順などがサポートされていれば壁もなく働けると思う。


多くが働けるようにする仕組み


●ピッキング時の治具
機械の部品をピッキングする際、全ての部品が埋められるような治具をつくった。これにより、組立てるときの欠品がなくなる。


バネは似ていて分かりにくいので、サイズが合うバネを見分ける治具をつくった。


●エアコンの部品(大きい部品)のピッキングの仕組み
どの部品を取ればよいか、ランプで教えてくれる。ランプの色は担当者によって異なるので自分のランプの色のところの部品を取り、ランプを消していく仕組み。最後の部品をとったらランプが点滅するのでそこで終了となる。

 


●紙類のピッキングの仕組み
それぞれの種類をバーコードで管理しており、間違ったバーコードをチェックしてしまうと画面にNGが出て作業ができなくなる。画面には、セットする順番や数などが表示されている。


●節電のための仕組み
電気を付けている現場には札を持っていき、作業が終わり電気を消すと札を戻しに来る。これで消し忘れを防止している。